日本脳炎ワクチン中止?

 5月末の読売新聞に突然「日本脳炎ワクチン中止」の記事が躍り、日本中がパニックに陥りました。厚労省から事前の通達はなく、ボクらのような一般の医者が知らない情報でしたので、朝のワイドショーを見てびっくりしました。
 誤解があるようですが、 接種中止ではなく、「接種するようすすめることを中止」したのであって、接種希望者はいままで通り接種ができます。
 6月18日に開かれた小児科学会神奈川県地方会の席上で、事情説明がありました。予防接種界で高名なある医学部の小児科教授が、個人的な見解として次のように述べられていました。
 山梨県で予防接種後に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と思われる病気を発症した患者があったので、救済措置の対象になった。この症例についてはADEMとは断定できないし、予防接種と因果関係があるというエビデンスはない。個人的には関係ないと思う。いままでもADEMのことはよく知られており、救済の立場から、因果関係が証明されなくても予防接種の副作用によるものと認定されていた。今回の例は、きわめて重症だったことと、地元紙で取り上げられて大問題になったため、厚労省が接種勧奨中止の決断をした。専門医への意見聴取はなかった。今後、接種できずに日本脳炎にかかる患者が増えることの方が問題である。専門家としては、今回の措置は正しいとは考えられない。リーク記事を書いた読売新聞は反則である。
 わが国の予防接種行政は、何かあったら困るという立場で貫かれています。もちろん、予防接種だけでなく、行政全般に言えることです。マスコミが「副作用」と騒ぐと、じゃやめちゃおうという姿勢です。すべての医療行為は効果と副作用をはかりにかけて選択されています。副作用のない医療行為はありません。副作用は「あってはならないこと」ではなくて、「当然あるかもしれないこと」であり、それでもなお必要なら実行するものなのです。