今季のインフルエンザについて

 もうすっかりインフルエンザはなりを潜め、3月に入ってから当院で確認したインフルエンザ患者は1名だけです。いまはインフルエンザにかわり、ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)、溶連菌感染症、水痘が目立っています。
 今季のインフルエンザの特徴は、A香港型だけが流行して、Aソ連型やB型の流行がみられなかったこと、軽症の患者が多く、従来診断の指標にしていた“インフルエンザ顔”(急な発熱、ぐったりして赤い顔)を示さない、元気でピンピンしている患者が多数見受けられたことが挙げられます。
  A香港型しか流行らなかったために、流行の規模が小さく、患者数が昨季よりかなり少なかったですね。おかげでキットや特効薬がなくならずにすみ、パニックは起こりませんでしたが、その陰で、たくさんの在庫を抱えて医院は悲鳴を上げています。

 シーズン途中に「タミフルは1歳未満の乳児には使ってはいけない」という情報が流れて現場が混乱しました。米国ロシュ社が実施した動物実験で、未熟な脳には高濃度の薬が移行する可能性を示唆する結果が出たという報告が発端でした。
 日本小児科医会が厚生労働省に問い合わせたところ、「ヒトの乳児における臨床的な問題、危険性を明確にすることはできず、現時点で1歳未満の患者に対する投与を禁忌とするだけの十分な根拠にはならない」ので、保護者に「丁寧に説明し、同意を得た上で、慎重に投与」すればよいという回答が示されました。

 昨日開催された横浜市小児科医会役員会で、インフルエンザ研究の第一人者の先生から、タミフルに関する裏話をお聞きしました。
 アメリカではこどもはインフルエンザにかからないし、ましてや死ぬことはないと考えられていた。しかし、今季のインフルエンザシーズンに多数の死者が出たので(本ページでもすでにお知らせしてあります)、米国ロシュ社がタミフルのせいにされるのを恐れた。アメリカは訴訟社会なので、訴訟の対象とされるかもしれないと考えたからだ。学問的な意味はない。6か月以降であれば小児の安全性にまず問題はない。

 タミフルに限らず、日本で発売されている薬の多くが、能書に「小児での安全性は確立されていない」と書かれています。生産者責任をとりたくないので、どうぞ使用者責任でということなんです。妊娠中や授乳中も同様なただし書きがあります。これは何とかしなければならない大きな問題です。

追記:『インフルエンザ患者 4割減 』 2004.4.7記
  きょうの朝日新聞の朝刊に上記見出しの記事がありました。昨年と比べて4割もダウン。ワクチン接種の効果かという意見もあるようですが、すでにお知らせしたように、今季のワクチンの効果には疑問符がついています。毎年流行の大きさはちがいますので、その変動の範囲内のことではないのでしょうか。ヒマだったわけだ。