●重症急性呼吸器症候群(SARS)アップデート

新しい診断基準 2003年4月29日

臨床的診断基準
・無症状または軽症呼吸器疾患
・中等症呼吸器疾患
  ー 発熱> 38℃ および
  ー 1つ以上の呼吸器症状(咳、息切れ、呼吸困難、低酸素状態)
・重症呼吸器疾患
  ー 発熱>38℃ および
  ー 1つ以上の呼吸器症状(同上) および
  ー  以下の1つ以上
    ー レントゲンで肺炎所見 または
    ー 呼吸窮迫症候群(RDS) または
    ー 原因が発見されない肺炎またはRDSの剖検所見
疫学的診断基準
  ー 発症10日以内の流行地への旅行(空港立ち寄りも含む) または
  ー 発症10日以内の患者(疑い例も含む)との密接な接触
検査診断基準
・確定 confirmed
  ー 急性期または発症後21日以上経過した検体でSARS-CoV抗体陽性 または
  ー SARS-CoV RNA検出 または
  ー SARS-CoVウイルス検出
・陰性 negative
  ー 発症後21日以上経過した回復期検体でSARS-CoV抗体陰性
・不確定 undetermined
  ー 検査が行われていないか不完全なもの
症例分類
・可能性例(probable):臨床的診断基準で原因不明の重症呼吸疾患に適合する2003年2月1日以降発症した症例で、疫学的基準を満たすもの。検査基準は問わない
・疑い例(suspect):原因不明の中等症呼吸器疾患臨床的診断基準に適合する2003年2月1日以降発症した症例で、疫学的基準は満たすもの。検査基準は問わない
                  SARS-CoV:SARS関連コロナウイルス

 
今回の改訂では症状の重さに段階をつけたことが特徴で、無症状の感染者がほかの人にこの病気をうつす可能性は否定できないとしています。検査が陰性でもSARSは否定するものではないとも言っています。

 この診断基準は報告や分類の際に用いるためで、患者を臨床管理する上で使用するものではないとも述べています。今までの定義とそれほど変わったものではないという印象です。2003.5.1記

MMWR5月9日号 2003.5.9

 5月7日までの累計患者数は29カ国6903例で、死亡495例(7.2%)。このうち米国では328例あるが、死亡例はない。SARS関連コロナウイルスの検査を終了した69例では、6例が陽性、63例が陰性である。

 ということで、米国では依然としてSARSによる死亡例はありません。きょうの新聞では「SARS死者500人を越す」と大々的に報じられていますが、その大部分は中国・香港の例です。医療レベルの差が治療成績に大きく影響していると推測されますね。

MMWR4月25日号(抄訳) 2003.4.25

 2002年11月1日から2003年4月23日までの累計患者数は25カ国から4288例の報告があり、死亡251例(5.8%)。米国では37州から245例の報告があり、このうち39例(16%)は肺炎や呼吸窮迫症候群のあるprobable SARSである。この39例のうち37例(94%)は中国、香港、シンガポール、ハノイ、トロントへの旅行者で、1例は患者の治療に当たった医療関係者、1例は患者家族である。27例が入院し、1例が人工呼吸器による治療をしている。

 カナダへの旅行者は3月29〜30日にトロントで開催された宗教団体の集まりに出席しており、この集まりの参加者からSARS患者が発生している。CDCではトロントへ旅行する場合には健康状態に注意するよう呼びかけている。

 現在の診断基準は特異性が低いので、CDCでは検査も含めた診断基準を作成する予定である。
probable SARSとは・・・
 前出の診断基準にあてはまるsuspected caseのうち、以下に該当するもの
・レントゲン上、肺炎や呼吸窮迫症候群(RDS)を認めるもの
・剖検で原因が発見されないRDSを認めるもの

MMWR4月11日号(抄訳) 2003.4.11

 4月9日までの患者数は16カ国2722例、死亡は106(3.9%)である。米国では30州から166例の報告があり、135例(81%)は成人、154例(93%)は10日以内に流行地へ旅行しており、9例(5%)は家庭内感染、3例(2%)は医療関係者である。大多数は胸のレントゲンは正常、33例(20%)には肺炎やRDSの所見があった。60例(36%)は24時間以上入院したが、死亡例はない。

 WHOとCDCでは中国本土、香港、ハノイ、シンガポールへの緊急性のない旅行は控えるよう勧告している。

 現時点で原因と目されている新型コロナウイルスの検査は特殊な検査室でしか行えない。他の検査では特徴的な異常は示されていない。臨床症状も他の肺炎疾患と区別はつかない。重症者から軽症者まで幅広くあるだろうし、感染していても症状が出ないこともありうる。

 抗ウイルス剤の効果は不明である。リバビリンは実験室段階でその有効性は証明されていない。この薬は催奇形性があり、使用する場合には重い溶血性貧血などの副作用があることに留意すべきである。
※検査について:抗体検査は発症後21日以上たたないと陰性でもこの病気を否定できない。その他にRT-PCR法、ウイルス培養法がある。

MMWR4月4日号 2003.4.4

 SARSは4月2日現在、16カ国から2232例報告されており、うち78例が死亡(死亡率3.5%)とされています。


 これらの症例はsuspected and/or probableな症例であるとされています。訳せば、「疑い例あるいは可能性の高い例」ということです。現時点では診断を確定する検査が開発中で、診断はあくまで暫定的な診断基準(前出)、すなわち臨床症状と疫学調査(他のSARS患者やSARS流行地との関連)、でつけられています。つまり、現時点では、インフルエンザの迅速検査のように、即座にこの病気を診断する手だてはないということです。

 原因として新型コロナウイルスが有力視されているようですが、ウイルスに効く薬はインフルエンザや水ぼうそうなど少数をのぞいてはありませんし、もちろん今までコロナウイルスに効く薬はありませんから、原因治療は困難でしょうね。