●非ステロイド系消炎剤ジクロフェナクナトリウムについて

 「熱さましを使った方がいいですか」のページにも書いてありますが、昨シーズンのインフルエンザ流行期の特徴として「一部の解熱剤を使うと脳炎・脳症の合併率が高い」との報道がありました。この問題について、厚生省が結論を出しました。

 これによると、インフルエンザ脳炎・脳症をすでに起こした患者に対してこの薬を投与すると、生存率等の予後が悪化する傾向が示されたとして、インフルエンザ脳炎・脳症時の使用中止を勧告したものです。使用すると脳炎・脳症にかかりやすくなる、発症を促進する因子と考えられたわけではありません。使ったら脳炎・脳症を起こす危険性が高くなるというデータはないけれど、脳炎・脳症の患者に使うと悪化するおそれがある、ということです。ですから、アスピリン製剤と違って、インフルエンザに使用してはいけないとされたわけではありません。

  同時に悪化因子として疑われたメフェナム酸(商品名ポンタールなど)については、はっきりした傾向は認められなかったので、使用中止にはされませんでした。

 ジクロフェナクナトリウムは薬の一般名で、商品名はボルタレンをはじめ、各社からいろいろな名前が付けられて発売されています。小児科ではもともとなじみの少ない薬で、とくに小さいこどもに飲み薬として投与することはあまりありません。ただし、坐薬がありますので、この形で投与されることはありえます。

  インフルエンザに使ってはいけないということではありませんが、製薬会社からも各医療機関にすでに情報が出されていますので、今後インフルエンザ流行時にわざわざこれを処方するお医者さんはいないだろうと思います。

 日本小児科学会理事会より会員に向けて以下の情報が流されました。

■インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について

 インフルエンザに関連して起こる脳炎・脳症に対するジクロフェナクナトリウム及びメフェナム酸の使用について、本学会の見解は以下のとおりである。

 1999、2000年のインフルエンザ脳炎・脳症研究班の報告では、解熱剤を使用していない症例でもインフルエンザ脳炎・脳症は発症しており、その死亡者が5分の1を占めているところから非ステロイド系消炎剤が脳炎・脳症を引き起こしていることは証明されていない。

 しかし、1999年のデータに比して2000年のデータではインフルエンザ脳炎・脳症が発症した場合の致命率についてはジクロフェナクナトリウムは有意差を持って高くなっている。一方、メフェナム酸に関しては2000年の調査でははっきりした傾向は認められなかった。

 また、他の非ステロイド系消炎剤の使用については、調査症例数が少なく、現段階でその関連性が明確になっていないので、さらに調査する必要がある。

 一般的に頻用されているアセトアミノフェンによる本症の致命率の上昇はなく、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンがよいと考える。

 以上より一部の非ステロイド系消炎剤はインフルエンザ脳炎・脳症の発症因子ではないが、その合併に何らかの関与をしている可能性があり、インフルエンザ治療に際しては非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきである。

 今後も本症の原因を含めてさらに研究班の継続した調査を要望する。