■低身長

低身長とは身長が低い状態をさします。医学的には、母子手帳にもある成長曲線に当てはめて、標準偏差マイナス2SD以下の状態(一番下の線より下)です。したがって、人口の2%の人がこれに該当するように定義づけられています。

 身長が低いことは、本人や家族にとって、しばしば悩みの種になります。とくにいまの時代は、外見のよさがもてはやされますからね。三高(高身長・高学歴・高収入)なんて言葉もあるくらいで。

 身長が伸びるためには成長ホルモンが必要であることは、よく知られています。でも、身長が低い人に成長ホルモンを注射すると、かならず身長が伸びると思っていませんか。それは誤解です。

 低身長の理由でいちばん多いのは、いろいろな検査をしてもはっきりした原因が見つからない、いわゆる体質的な低身長です。ただ背が低いだけで、病気ではありません。これが約8割で、残り2割が病気による低身長です。しかも、この2割のうち、成長ホルモンが分泌されないために起こる(ということは成長ホルモン治療の効果が期待できる)「成長ホルモン分泌不全性低身長」は、その一部に過ぎません。ですから、身長の低い人すべてに成長ホルモンの治療が効くわけではないのです。

 低身長を起こす病気は、これ以外にも、甲状腺などのホルモンの病気、染色体異常、骨の病気、糖尿病などの代謝性疾患、先天的な奇形症候群など、いろいろあります。

 低身長でお悩みの方は、いちどかかりつけ医にご相談になり、必要ならばしかるべき施設で検査を受けることをおすすめします。

 神奈川県立こども医療センター・内分泌代謝科の立花克彦先生が、ある学会の講演の中で、「原因がはっきりしないうちから、君は低身長だから病気だと決めつけて、病気を治すために成長ホルモンを打って背を伸ばしてもらってきなさい、と患者に指示して紹介してくる医者がいて困る」と嘆いていらっしゃいました。低身長の多くは体質で、病気ではありません。病気でないものを病気だと決めつけることは、こどもに屈辱感や劣等感を植えつけるばかりです。

 いつ検査を受けたらいいのでしょうか。立花先生は「親が心配になった時が最適」とおっしゃっていました。ただし、治療が必要な病気の場合、治療開始があまり遅くなると、十分な身長の伸びが期待できないことがあるので、なるべく早く診断をつける方がよいようです。低身長で小児科を受診する目安は、成長曲線でマイナス2SD以下の場合、あるいは、身長の伸びが急に止まって横這いになったときです。

 立花先生が一般向けに書かれた『低身長は病院でここまで伸ばせる』(二見書房)という名著があります。この本の中で先生は「身長が低くても健康であることがいちばん」とか、「背が低いことは個性のひとつ」と述べられています。低身長の多くは体質なのですから、それを個性として尊重する心が、親にも社会にもあってほしいものですね。この本は残念ながら絶版になっているそうです。お読みになりたい方はご連絡ください。