■無菌性髄膜炎

「むきんせいずいまくえん」とはウイルスによってひきおこされる髄膜炎、つまりウイルス性髄膜炎のことを主に指します。髄膜炎と診断するためには、髄液(ずいえき)検査をするのですが、その髄液の中に細菌がいない(無菌である)ところから、こう呼ばれます。

 人間の脳は頭の中にある脳と背骨の中にある脊髄(せきずい)がつながっていて、まん中が空洞になっています。その脳脊髄の空洞を満たしている液が髄液です。腰の部分の背骨の間に針を刺して採取します。これを腰椎穿刺と言います。小児科ではよく行われる検査で、髄膜炎が疑われる場合には必須です。髄膜炎かどうかは血液検査ではわかりません。

 無菌性髄膜炎の原因でいちばん多いのはヘルパンギーナのところで書いたエンテロウイルスの仲間で、80〜85%を占めます。頻度はエコーウイルス、コクサッキーウイルスB群、コクサッキーウイルスA群の順です。いわゆる“夏かぜ”の原因になるウイルスで、夏から秋にかけて流行し、乳幼児に多い特徴があります。エンテロウイルス以外にはムンプスウイルス(ムンプスは流行性耳下腺炎やおたふくかぜと同じ)や、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスおよび水痘ー帯状疱疹ウイルス)などがあります。 髄液検査で無菌性髄膜炎とわかっても、原因ウイルスを確定するのは容易なことではありません。ウイルスの同定検査など特殊検査が必要になるからです。ムンプスウイルスによる場合でも、40〜50%は耳下腺の腫れなどのおたふくかぜ症状が出ません。

 熱があって吐く、頭痛がひどいという症状があるときに疑います。首が痛くて曲げられないときにはかなり疑わしいのですが、これは必ずみられるわけではありません。多くは入院しますが、治療はウイルスなので対症療法がメインです。腰椎穿刺をすると症状がおさまることが多く、治療的な意味合いもあります。予後は一般に良好で、神経学的後遺症を残すことは少ないとされています。

 髄膜炎のもう一つの大きな原因に細菌があります。細菌性髄膜炎は症状も重く、生命に対する危険性も大きく、後遺症も問題となります。