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流行性耳下腺炎は診断がむずかしい病気のひとつです。「流行性耳下腺炎」は「おたふくかぜ」や「ムンプス」とも呼ばれます。耳下腺という耳の真下にある唾液腺(唾液をつくる組織)が腫れて、顔がおたふくのようになるのでおたふくかぜの呼び名があります(おたふくなんていまの若い人は知らないかもしれません)。見ればわかるから診断は簡単だろうとお思いでしょうが、そうはいきません。耳下腺の腫れを起こす病気はおたふくかぜ以外にもいくつもあって、その中でムンプス・ウイルスによる耳下腺炎がおたふくかぜなのです。医者なら耳下腺が腫れていることは容易にわかりますが、それは単に耳下腺炎であって、それがムンプス・ウイルスの感染によるものかどうかは診ただけでは判断できまないことが多いのです。ふつうは両側の耳下腺が腫れますが、4分の1は片方しか腫れないし、耳下腺が腫れずに顎の下の顎下腺(がっかせん)だけ腫れる場合もあるので、こういうのはとくに診断がやっかいです。確実に診断するには血液の抗体検査しかありません。しかも腫れてから2週間以上たたないと抗体は上がってきませんので、迅速診断はできません。耳下腺炎イコールおたふくかぜと診断している医者は、説明不足です。感染しているのに症状が出ない不顕性感染というのもありますが、こういうのは診てもまったくわかりません。
治療はウイルスの病気なのでありません。抗生物質は不必要です。痛みや熱に対して対症的に鎮痛解熱剤を処方するのみです。
合併症では5%程度の率で起こる髄膜炎がとくに要注意です。ウイルスが頭の中に入り込んで頭を痛がったり吐いたりして重症感があります。診断には髄液検査という特殊な検査が必要です。ウイルスによる髄膜炎は無菌性髄膜炎と総称され、一般に後遺症を残したり死亡することはまれです。髄膜炎以外では2万人に1人程度難聴を合併することが知られていますし、有名な睾丸炎(こうがんえん)も思春期以降の男子の3割程度にみられます。ただしみなさんが心配される不妊はまれとされています。 |